第二十七期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)、
福島市の「摺上亭大鳥」で行われていた王立誠棋聖と挑戦者、山下敬吾七段の第二局は三十日午後六時九分、先番山下が二百十七手で中押し勝ちした。これで山下は二連勝。
一日目打ち掛けの後、王は対局会場のホテルで夕食をとり、関係者と雑談をして過ごした。山下は外に食事に出掛け、帰りにコンビニで雑誌を買い求めた。
福島地方は前日からの積雪が約二十センチ。明け方からは強い風も吹き始め、雪煙が舞う朝を迎えた。対局場の前の山もかすんで見え、窓の外には長さ約五十センチのつららも下がる。
両対局者は定刻直前、相次いで入室。立会人の石田芳夫九段の開いた山下の封じ手黒65
は右辺一間飛びだった。右辺白に迫りながら、下辺、左辺にも圧力をかける山下らしい手厚い一手。
しかし解説の小林覚九段は、この封じ手を「山下さんらしい一手だが、負ければ敗着」と評した。局後、山下も「封じ手は悪かった。左辺を守るくらいだったか」と悔いた。黒は左辺に地を確保すれば、十分に間に合う局勢だった。
王はすかさず、白66と押さえ左辺に手を着けた。右辺に手を掛けていては遅れる。これもまた王らしい機敏な仕掛けだった。山下の封じ手が王にチャンスを呼び込んだとも言える。
黒は白4の下を切れば収まりやすいが、山下は黒67と上から押しつけた。王も白68と継ぐ。
山下が黒69ともうひとつ押したのに対し、王は白70と当然の当て。ここで山下は当てに構わず、黒71と突き当たった。左辺への仕掛けは予想以上に厳しかったらしく、山下には珍しく体をよじって考える場面も見られた。
小林九段は「黒地が見込まれた左辺で攻めあげられては、明らかに黒に誤算があった」と話した。
しかし白86の押さえがぬるかった。山下は黒87と右辺白を圧迫。この手は弱くなった左辺黒にも援軍となっている。これに対する白88は、左辺黒を更に攻める意図。しかし右辺白を弱くしてしまった。白は左辺の折衝で流れをつかんだものの、勝負は再び混沌とした。
王は白94と切り、これによって左辺黒と右辺白の双方の大石の生死にかかわる難戦に。結局、双方しのぎきったが、この後、山下は上辺に黒133と打ち込み、優勢を築く。上辺は白の大石の生きを巡って二段コウとなった。山下はコウを譲る代わりに、右下隅の白を取り、勝負を決めた。
第三局は来月五、六日、滋賀県大津市の「琵琶湖ホテル」で行われる。
山下七段の話「封じ手が悪く、途中では大分悪いと思っていた。上辺を打てて少し良くなったかと思った」
王棋聖の話「左辺では得をし悪くないと思った。左辺86の押さえが軽率だった。大きいところはいっぱいあったのに・・・。それから流れが悪くなった」
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