優勝賞金4500万円に
囲碁界最高のタイトル戦、第34期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)は14日、台湾台北市で開幕する。台北市で棋聖戦が開催されるのは第25期以来、9年ぶり。山下敬吾棋聖(31)に対するのは、棋聖初挑戦となる張栩三冠(29)。5連覇を目指す山下棋聖には名誉棋聖称号の獲得、張三冠には7大タイトル制覇がかかり、どちらが勝っても大きな記録が誕生する。今期から優勝賞金は4500万円にアップする。注目の対戦を小林覚九段(50)と小松英樹九段(42)に展望してもらった。
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◆七番勝負を展望する小林九段(左)と小松九段 =本間光太郎撮影
『張さん 勝負師として一枚上』 小林覚
『山下さん 体力あり調子いい』 小松英樹
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――大きな記録のかかった七番勝負となる。名誉棋聖は藤沢秀行、小林光一九段に続き3人目、七冠制覇は趙治勲二十五世本因坊以来2人目だ。
小林 張さんは昨年、史上初の五冠となり、七冠同時制覇が目標としてあっただろう。名人防衛に失敗し同時はなくなったが、それでもすごい記録だ。山下さんの名誉棋聖も立派。タイトルを守れない時期があったが、気がつけば棋聖4連覇だ。
小松 張さんは最強の挑戦者と言っていい。すごい七番勝負になることは間違いない。
――張三冠が棋聖初挑戦とは意外な感じもする。
小林 張さんは棋聖リーグと名人防衛戦の時期が重なり、体力的にも厳しかったのだと思う。
――2人の過去の対戦成績は張三冠が勝ち越している。タイトル戦も張三冠の4勝2敗。
小松 七番勝負となれば過去の成績は関係ないでしょう。2人が戦ったタイトル戦はいずれも五番勝負で持ち時間が短い。どちらかといえば張さんの得意分野だ。
小林 確かにあまり参考にはならない。七番勝負は時間があるので間違うところが少ない。実は山下さんは早碁の成績がむちゃくちゃ悪い。時間のない碁に不安を持っている。逆に七番勝負には自信を持っている。張さんが時間の短い碁を得意としているのは確かだが、だからと言って七番勝負を苦手としているわけではない。山下さんより七番勝負は多く打っている。勝負師と言っていい。最後に勝ちきる力がある。
――2人の調子はどうか。
小松 張さんは名人戦に負けた後、不調かなと感じる。棋譜から疲れが読み取れる。王座を防衛したが、年末の天元戦は山下さんの挑戦を受け、タイトルを奪われた。これは張さんにとっては痛い。山下さんは調子も気分もいいでしょう。それに棋聖戦となると一段と強くなる。
小林 山下さんにとって棋聖戦は我が家みたいなところがある。いろいろな意味で落ち着いて打てる強みがある。普段より何割か強くなると思った方がいい。張さんは投了が早くなっている。粘りがなく、我慢が利かない碁を打っている。やはり疲れではないか。本調子とは言えない。
――七番勝負の展開をどう予想するか。
小林 この2人では黒番有利。白番で先に勝った方がペースをつかむ。
小松 4連勝のように一方的になることはない。
――それではずばり勝敗を予想してほしい。
小林 4勝2敗で張さん。ただし条件がある。棋聖戦は山下さんのホームであること、長期戦による疲れ、この二つのマイナスを克服することが必要だ。張さんは態勢を整えてくるだろうし、それができる棋士。内容より勝負を求めてくる。勝負師としては張さんが一枚上だ。
小松 私は山下さんが3敗するとは思えない。最近は碁の内容がいい。疲れを知らない体力もある。4勝1敗か2敗で山下さんとみる。
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張さんは最強の挑戦者。今期は名誉棋聖称号がかかるが、張さんに勝ち、皆さんに納得してもらえるかたちで獲得したい。
張さんは勝負に徹している。自分とはタイプが違う。一時は苦手意識もあったが、今は五分と思っている。過去の成績は気にならない。
調子は悪くない。ここ数年で一番いいかもしれない。一局一局に集中できている。それに1年を通じて体のリズムが棋聖戦に合ってきている。七番勝負は時間に余裕があり、自分に向いている。落ち着いて、いい碁を見せたい。
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◇やました・けいご 1978年、北海道旭川市出身。小学2年で史上最年少の小学生名人。93年入段。2000年、第25期碁聖獲得。03年、王立誠棋聖を破り、第27期棋聖。06年、第30期棋聖に返り咲き、以来4連覇。5連覇で名誉棋聖の称号を獲得する。昨年末、天元奪取(2期目)。ほか王座2期。 |
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棋聖は棋士としての目標だった。なかなか挑戦者になれず、悔しい思いをしてきた。初めてつかんだチャンスに、気持ちの高ぶりを感じている。
棋聖を獲得すれば七冠制覇となることは意識している。狙っていきたい。名人を失ったことは不本意なところがあるが、過ぎたことは忘れて、精いっぱい七番勝負を戦いたい。
山下さんは個性がしっかりあるスケールの大きな碁。少し勝ち越しているが、七番勝負は初めてで、過去のデータは意味がない。内容の濃い碁を打ちたい。
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◇ちょう・う 1980年、台湾台北市出身。10歳で来日し、林海峰名誉天元に入門。94年入段。2003年、第58期本因坊獲得、2連覇。04年、第29期名人獲得、通算4期。09年、名人、十段、天元、王座、碁聖を保持し、史上初の五冠に。棋聖を獲得すれば2人目の七冠制覇となる。夫人は小林泉美六段。 |
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● 第34期棋聖戦 七番勝負 日程 ● |
山下敬吾棋聖 対 張 栩 三 冠 |
対局日 |
対局場 |
第1局 |
1月14日(木) 15日(金) |
台北市 「ホテル・ロイヤル・タイペイ」 |
第2局 |
1月27日(水) 28日(木) |
名古屋市 「名古屋城茶席」 |
第3局 |
2月3日(水) 4日(木) |
大分県別府市 「ホテル白菊」 |
第4局 |
2月18日(木) 19日(金) |
神戸市 「有馬グランドホテル」 |
第5局 |
2月25日(木) 26日(金) |
静岡県伊豆市 「玉樟園新井」 |
第6局 |
3月11日(木) 12日(金) |
新潟県南魚沼市 「龍言」 |
第7局 |
3月17日(水) 18日(木) |
甲府市 「常磐ホテル」 |
・全互先 先番6目半コミ出し ・持時間 各8時間 |
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● 2人のタイトル戦対戦成績 ● |
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棋戦 |
勝ち |
内容 |
負け |
04年 |
第52期 王座戦 |
張栩王座 |
3―1 |
山下九段 |
05年 |
第53期 王座戦 |
張栩王座 |
3―0 |
山下天元 |
06年 |
第54期 王座戦 |
山下棋聖 |
3―1 |
張栩王座 |
08年 |
第33期 碁聖戦 |
張栩碁聖 |
3―1 |
山下棋聖 |
08年 |
第53期 王座戦 |
張栩名人 |
3―1 |
山下王座 |
09年 |
第35期 天元戦 |
山下棋聖 |
3―2 |
張栩天元 |
(肩書は対戦当時) |
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● リーグ戦結果 ● |
Aリーグ |
順位 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
5 |
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依 田 紀 基
九 段 |
高 尾 紳 路
九 段 |
羽 根 直 樹
本 因 坊 |
王
立 誠
九 段 |
清 成 哲 也
九 段 |
李
沂 修
七 段 |
依田 |
- |
● |
○ |
○ |
● |
● |
高尾 |
○ |
- |
● |
○ |
○ |
● |
羽根 |
● |
○ |
- |
○ |
● |
● |
王 |
● |
● |
● |
- |
● |
● |
清成 |
○ |
● |
○ |
○ |
- |
○ |
李 |
○ |
○ |
○ |
○ |
● |
- |
成績 |
2 位 |
4 位 |
3 位 |
1 位 |
陥 落 |
陥 落 |
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Bリーグ |
順位 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
5 |
|
井 山 裕 太
八 段 |
張
栩
名 人 |
趙 治 勲 二 十 五 世 本 因 坊 |
河 野
臨
九 段 |
宮 沢 吾 朗
九 段 |
秋 山 次 郎
八 段 |
井山 |
- |
○ |
○ |
● |
● |
○ |
張 |
● |
- |
● |
○ |
● |
● |
趙 |
● |
○ |
- |
○ |
● |
○ |
河野 |
○ |
● |
● |
- |
● |
○ |
宮沢 |
○ |
○ |
○ |
○ |
- |
○ |
秋山 |
● |
○ |
● |
● |
● |
- |
成績 |
4 位 |
1 位 |
陥 落 |
3 位 |
陥 落 |
2 位 |
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